校長室より

校長室より

前期始業式 校長講話

 皆さんおはようございます。令和6年度前期の始業式を迎えました。これから1年間、高校生活に取り組んでいく2年生、3年生の皆さんにエールを送りたいと思います。

 先月25日には、バトン部の全国大会の応援のため、千葉県の幕張メッセに行ってきました。この後表彰があると思いますが、バトン部の皆さんは、高校生のsong&pom部門のスーパーラージ編成で、全国1位の成績を収めることができました。まずはバトン部の皆さん、全国1位おめでとうございます。

 今回は審査員席のステージ向かって右側で観戦しましたが、さすがは全国大会ということで、どの学校の演技もみな完成度が高く、レベルの高さを感じました。本校の演技はスーパーラージということで、人数も多く迫力がありましたが、大きな破綻なく終えることができました。結果、全国1位ということで、日ごろの努力が高く評価されました。見ている人は見ているものだと改めて感じました。

 さて、令和6年度が始まりますが、皆さんも一人ひとり、胸に秘めている決意があるのではないかと思います。本日午後には入学式がありますが、皆さんは、皆さんの入学式で、私が話したことを覚えているでしょうか。

 本校で過ごす「心がけ」としてそれぞれ3点お話ししましたが、皆さんに共通する内容として、「自分の志を立てる」という話をしました。皆さんは、皆さん自身が生涯をかけて成し遂げたいもの、皆さん自身の「志」を見つけることができているでしょうか。

 皆さんは本校で文武両道を実践し、着実に力を蓄えていると思います。高校卒業後は大学で、また大学院で学び、さらにパワーアップした力を蓄えていくのだと思います。

 では、その力を、何のために使いますか。

 自分のために使う。もちろんこれは基本です。しかし、先月の卒業式で取り上げて話しましたが、65期の先輩方の学年目標「人のため」の観点に立ち、皆さんが今後、蓄えていく力を「人のため」に使っていくと考えたならば、どうでしょうか。

 世の中には、解決すべきたくさんの課題があります。課題と言えば、皆さんはすでに、自ら課題を設定し、解決策を考える探究学習に取り組んでいます。

 3年生の皆さんの探究発表会では、災害の際、蕨市内に自生する「雑草を食べて生きることはできるのか」、また、より速く泳ぐために「人間と海中の哺乳類のドルフィンキック」を比較するなど、ユニークな取組が数多く見られました。着眼点が素晴らしく、今後の可能性を感じさせる内容でした。

 世の中にある様々な課題の解決に挑戦することは、「人のため」に自らが蓄えた力を活用することにつながり、「高い志」を立てることにもつながります。そうであれば、皆さんが蓄える力は、より大きく、より強いものである方がよいということになります。志望する大学・学部についても、自分が蓄えたい力を、より効果的に身に付けることができるのはどこなのか、真剣に検討することが必要です。大学には施設や設備があり、教授がいて、そしてともに切磋琢磨する仲間がいます。新しい年度の始まりに際し今一度初心に帰り、皆さんが立てるべき「志」について、確認していただきたいと思います。

 それでは令和6年度が始まります。楽しい学校生活にしていきましょう。以上で校長講話を終わります。

バトン部 全国大会壮行会 校長より激励

 ただ今紹介がありましたが、バトン部の皆さんは、今月25日に千葉県の幕張メッセで行われる全国大会であるUSA School&College Nationals 2024に出場されるということです。

 昨年度に引き続いての全国大会への出場おめでとうございます。

 バトン部の皆さんは、1月に東京都の武蔵野の森総合スポーツプラザで行われた全国高等学校ダンスドリル冬季大会に続き、今シーズン2度目の全国大会出場ということです。

 1月の全国大会は応援に行かせていただき、審査員席のすぐ後ろで観戦しましたが、本校はラージ編成ということで、広いステージいっぱいに展開され、大変見応えのある、迫力のある演技だと思いました。

  25日の全国大会でも、日ごろの練習の成果を大いに発揮して、活躍されることを期待しております。応援しています。

終業式 校長講話

 皆さんこんにちは。令和5年度の終業式を迎えました。

 1年生は、蕨高生としての最初の1年間、2年生は、蕨高校の中核を担う2年生としての1年間、それぞれどうだったでしょうか。明日から春休みを迎えますので、令和6年度という新しい1年間に向け、新たな計画を立てて臨んでいただきたいと思います。

 さて、19日の火曜日には、先日卒業したばかりの65期生による「受験速報会」が行われました。1年後、今度は話し手として登壇している自分をイメージしながら先輩の話を聞いた2年生も多かったのではないかと思います。

 併願校の考え方について話を聞く場面がありました。難関国立大学に合格したある先輩は「共通テストから二次試験までは意外と時間がない。第一志望の二次試験に全力で取り組むためには、私立の併願校は負担の少ない大学を厳選した」と話していました。また、別の難関大学に合格した先輩は「一つの学部で幅広いテーマを扱う大学では、入学してから自分の専攻を決めるところも多い。一つの学部・学科に絞って併願校を決め、全滅するリスクを避けるため、自分はあえて様々な学部・学科を併願した」と話していました。どの先輩も、自分の考えをしっかり持って受験に臨んでいるということが伝わってきました。

 2年生の皆さんは、すでに志望校を決め、いよいよ本格的に勉強に臨んでいくと思います。蕨高セミナーの講師として来校した先輩は、浪人が決まったとき「これから思いっきり勉強できる」とうれしくなったと話していました。私もとても共感できました。勉強することは、本来、とても楽しいことです。皆さんに浪人を勧める話ではもちろんありませんが、充実した楽しい1年にしていただきたいと思います。

 ここで、蕨高校の先輩として、自らの体験を踏まえ、アドバイスを一つ伝えます。それは「チャレンジ校を設定しよう」ということです。

 皆さんは志望校をどのように決めているでしょうか。蕨高校は県南部にあり東京にも近いので、自宅から通学可能な関東近県の国公立大学や、都内にある私立大学などが候補になっている方も多いのではないかと思います。仮に学びたい学部・学科がある場合、皆さんはその学部・学科の最難関の大学を、志望校に挙げているでしょうか。

 私の場合は難関大学の法学部を第一志望に掲げましたが、相当の心理的な抵抗がありました。3年の夏休みに、大宮にあった予備校の夏期講習を受講しましたが、蕨高生がいっぱいいたので、浪人のときは、遠くの高田馬場にある予備校に通うことにしました。

 蕨高生である自分が、難関大学を志望していいのか。当時の私はそんな気持ちを持っていました。多くの皆さんには当てはまらない話だと思いますが、無意識に、遠慮している人はいないでしょうか。自分で自分の力の天井にふたをする必要はありません。

 関東近県の国公立大学を第一志望と考えているのであれば、チャレンジ校として、旧帝国大学などの難関大学を目標とすることを考えてみてください。また、首都圏の私大を第一志望と考えているのであれば、所謂「早慶上理」を目標としてみてください。このことにより、本来の第一志望校の合格率を高めることができると言われています。

 受験速報会の先輩からは、「自分は上位の大学を目指した。就職を考えている企業があり、内定者も多かったから」という話も聞けました。目標と設定する大学により、1年間の学びの質も変わってきます。令和6年度。納得のいく目標を設定して学ぶ楽しい1年にしていきましょう。以上で校長講話を終わります。

後期球技大会 開会式 校長あいさつ

 おはようございます。校長の山本です。

 昨日の卒業式では、準備から片付けに至るまで、ご協力ありがとうございました。

 また、生徒会本部の野島会長には在校生を代表して「送辞」をお願いしましたが、式が終わった後、来賓の方から「送辞の内容が素晴らしかった」とお褒めのことばをいただきました。

 皆さんのご協力をいただいて、よい卒業式を挙行することができたのではないかと思います。

 さて、この球技大会は、3年生が卒業して最初の生徒会行事になります。全体を通して、生徒が主体の運営となります。

 達成すべきミッションは、皆さんそれぞれが、自らの満足度を高めることです。

 生徒会行事ですから、いわゆるオーディエンス、見物するだけの人は一人もいません。皆さん一人一人が主役です。安全には十分配慮しながら、皆さんが定めたルールをしっかり守って、最高に楽しい球技大会にしていただきたいと思います。

 以上で開会式の校長あいさつを終わります。頑張ってください。

議論しよう(生徒会誌『さわらび』第61号校長のことば)

 「校長先生、ちょっといいですか。」

 1年生が校長室に入ってきた。「蕨高校は、なぜ校舎の3階に渡り廊下がないのですか。」

 何でも、探究学習の課題だと言う。ふだん生活しているB棟の3階からA棟の3階に移動する際、2階に降りて進路指導室前を通ってまた3階に上がるのが不便なので思い付いたとのことである。

 自分が感じた何気ない疑問をそのままにしないで調べ、掘り下げていくのは探究学習の原点である。疑問に感じたことを尋ねてくれたことに感謝し、昼休みの短い時間であったが、お互いの意見を交換し、議論した。面接練習以外で生徒が直接校長室に来ることは滅多にないので楽しかった。

 以前校長講話で、難関大学を目指す理由について「自分の力を試したかった」と考える生徒が増えているという話をした。卒業生との懇談会で話してくれた大学生の場合は数学だったが、自分の場合はどうだったかと思い出してみた。代々続いている生徒会誌『さわらび』にちなみ、自分が在学していたころの蕨高校のエピソードを紹介する。

 高校2年次、3年次の担任は国語科の教員で、「議論しよう」が口癖だった。彼が「議論しよう」を連呼した背景には、利害の衝突があった場合、いわゆる「力」ではなく、話し合いで解決することが大切だということを、私たち生徒に根付かせたいとの思いがあったのではないかと推察する。

 2年生のあるとき、授業に関連して、教科担当と生徒との間でちょっとしたトラブルが発生した。担任に相談すると「議論しよう」。放課後に話し合いの場がもたれた。一方的で感情的な生徒のわがままと受け取られないよう、みんなで相談して、生徒の意見を伝えたことを覚えている。

 浪人後、入学する学部をこれまで志望してきた法学部から教育学部に変える際は大いに悩んだが、この2年生のときの「議論」の体験が充実していて楽しかったことを思い出し、弁論を扱うサークルに入ってさらに自分の「議論する力」を試すこととして、自分を自分で納得させた。結果として、いわゆる「部活動」で大学を決めた。

 ところで、今年度の1年生対象の社会人講演会では、講師の本校32期の高山範理氏から、英国留学中、自分の意見を表明しないのは、相手を尊重しないのと同じだということを学んだというエピソードが語られた。自分の意見を言う、相手の意見を聞く、それぞれの利益を主張する議論を経て最適解を導く。こうした姿勢は、今後ますますグローバル化する社会の中で、一層求められて来ることと思う。特に卒業し、それぞれの進路先で活躍する65期生には、これからもこの「議論する力」を磨いてほしい。

 11月には新しく野島生徒会本部も発足した。「議論」することは、少なくとも卒業生である私の中では、蕨高校の伝統である。

 蕨高校生よ、大いに議論しようではないか。

第65回卒業証書授与式 式辞

 暖かな風とともに、花の心地よい香りが本格的な春の訪れを感じさせる今日の佳き日に、令和5年度 第65回蕨高等学校卒業証書授与式を挙行しましたところ、学校評議員 早稲田大学教授 三村 隆男様、PTA会長 目黒 正伸様、後援会会長 前田 智子様、同窓会会長 晝間 日出夫様をはじめ、多数の御来賓並びに保護者の皆様の御出席をいただき、かくも盛大に開催できますことに、改めてお礼と感謝を申し上げたいと存じます。

 65期の卒業生の皆さん、御卒業おめでとうございます。皆さんが本校に入学されたのは令和3年4月。コロナ禍による影響が続く中、本校の伝統行事である臨海学校も、前年に引き続き中止となりました。悔しい思いをした皆さんも多かったのではないかと思います。

 私が本校に着任した令和4年度、皆さんは学校の中核である2年生でした。3年生が次々と部活動を引退し、受験勉強に本格的に取り組んでいく中、本校を力強く前に進めていただいたのは65期生の皆さんでした。まだ数々の制約が残る中、蕨高祭を成功させ、沖縄への修学旅行も実施していただきました。コロナ禍で数々の制約を余儀なくされてきた本校を、ひとつずつ丁寧に、日常の活動へと回復させていった、その先頭には、いつも65期の皆さんがいました。

 最も印象に残っているのは、令和5年1月早朝の教室の様子です。私は日課として朝、校内を歩いています。A棟の3年生が朝早くから登校し、教室で自習している様子を眺めていましたが、その1月の中旬、共通テストの直後から、急にB棟の2階を中心に、早朝から自習している生徒が増えていることに気が付きました。65期の皆さんでした。まだ部活動を続けている人も多かったと思いますが、その目的意識の高さに驚きました。誰に言われたわけでもないのだと思います。自ら考えて行動できるという65期の皆さんの蕨高生としての在り方は、後輩への模範として語り継いでいきたいと思います。

 さて、本日、この蕨高校を旅立っていく皆さんに、校長として、最後のお話をしたいと思います。それは、皆さんの学年目標「人のため」に関わることです。

 この学年目標の趣旨について、学年主任の波多先生に改めて教えていただきました。

 蕨高校は進学校であり、学業の優先は当然であるが、その前に学校は人間育成の場である。登校時間、清掃の時間をはじめ、すべての時間が人間育成のための時間であり、きちんと学校で学ばなければならない。この点を踏まえて設定した、とのことでした。

 私は24期の卒業生ですが、「人間育成」と聞いて、思いあたる点がありました。蕨高校は文武両道、3年間部活動に打ち込み、臨海学校や強歩大会など、学校行事もハードなものばかり。これらの点は伝統なのでしょう。本校は今年で68年目を迎えますが、こうした学校の在り方は、歴代の校長をはじめとする教職員が、その時々において検討を重ね、その結果、現在まで続いているものだと思います。蕨高校の「人間育成」、人間の土台をつくる力には確かなものがあります。

 この学年目標「人のため」ですが、皆さんのこれからの人生において、例えば、就職をはじめ、様々な人生の選択を迫られる場合にも、大切にしていただきたいことばであると思います。

 ところで、皆さんはアップルの共同創業者の一人であった故スティーブ・ジョブズ氏を知っていると思います。彼がつくったスマートフォンである「アイフォン」を持っている人も多いのではないかと思います。彼は多くの名言を残していることでも有名ですが、こんなことばも残しています。

 「顧客はより幸せでよりよい人生を夢見ている。製品を売ろうとするのではなく、彼らの人生を豊かにするのだ」

 これは、皆さんの学年目標「人のため」につながることばではないかと思います。

 皆さんの多くはこれから、大学や大学院などを経て、いずれは仕事に就くことになると思います。「働く」という漢字は「人」が「動く」と書きますが、「働く」とは、誰かの役に立つことです。

 そして、皆さんは「働く」ことで報酬を得て、自らの生計を立てていくことになります。いささか楽観的かもしれませんが、世の中がよくできているなと思うのは、この「人のため」に「働く」という点を突き詰めていくと、より多くの「人のため」になる仕事をした人のところに、より多くの報酬が流れているという事実に突き当たります。

 世界で最も時価総額の高い企業はアップルですが、皆さんの手元にもある「アイフォン」をはじめ、世界中の多くの人々に豊かな生活を提供し、多くの「人のため」になる仕事をしているからこそ、多くのお金が集まっているとも考えることができます。グーグルやアマゾンなどの「ガーファ」と呼ばれるプラットフォーマーについても同じことが言えると思います。それぞれの企業の時価総額が高いところや、お金が集まっているところに目が向きがちですが、様々なイノベーションによって、世界中の多くの人々に豊かな生活を届けていることも事実なのではないかと思います。

 65期の皆さんの未来はまさに無限大ですが、今後の様々な局面で選択に迷った場合は、どちらがより「人のため」になっているかという点にも留意していただきたいと思います。皆さんの中には将来、故スティーブ・ジョブズ氏のように起業する人も出てくるのではないかと思いますが、研究や仕事を進めていく中で、より多くの「人のため」になる成果を上げることで、皆さんの生活も豊かなものになっていくのだと思います。

 蕨高校で改めて出会った「人のため」ということばを忘れずに、今後の皆さんの生活を豊かにしていっていただきたいと思います。

 ここで、保護者の皆様に申し上げたいと存じます。これまで本校の教育に御理解と御協力を賜りありがとうございました。お子様がこのように立派に成長され、新しい人生に旅立つ逞しい姿に、心から祝福を申し上げます。卒業は、本人の努力の結果であることは言うまでもないことですが、それを支えた御家族の皆様の力強い励ましがあったおかげだと思います。このことに対し、心から祝意と敬意を表したいと存じます。

 結びに、本日御臨席を賜りました皆様に重ねてお礼申し上げますとともに、65期卒業生346名の前途洋々たる人生を心から祈念し、式辞といたします。

 

 令和6年3月14日

 埼玉県立蕨高等学校長 山本 康義

「幸せのレール」は隣にある(『蕨高新聞』第163号 巻頭言)

 65期の皆さん、ご卒業おめでとうございます。皆さんの前途洋々たる未来を祝します。皆さんが様々な分野で活躍し、成功を収めることを願っています。

 と、ここまで書いて、皆さんに餞のことばを贈りたいと考えました。せっかくなら、一生のお守りになるようなものがいいと考えて、思い出したのが、ロックミュージシャンである矢沢永吉さんの「サクセスとハッピー」のエピソードです。

 矢沢永吉さんは1949年生まれの74歳。現役のアーティストです。1977年に日本のロック・ソロアーティストとして初の日本武道館単独公演を敢行し、翌78年には「時間よとまれ」が大ヒットするなど、スーパースターとして頂点を極めます。しかし、2001年出版の自伝『アー・ユー・ハッピー?』の中で、次のように述べています。

 「オレは、サクセスしたら、すべてが手に入ると思っていた。そしてオレはサクセスした。金も入った。名誉も手にした。だけど、さみしさは残った。おかしいじゃないか。(中略)ハッピーじゃないなんて。」そして、こう続けています。「そう思ってふと見ると、幸せってレールは隣にあった。オレはそのレールに乗っていなかった。」

 それでも、矢沢さんはこう述べています。「オレは絶対幸せになる。『幸せのレールは隣にある』と『気づく人』だったから。」

 「いい大学」の次は「いい仕事」。出世もしたいし、お金だって稼ぎたい。誰もがそう願っています。でも、矢沢さんは断言しています。サクセスのレールの先にハッピーはない。ハッピーは隣のレールを走っている。

 皆さんには、ぜひ、この隣を走っている「幸せのレール」に「気づく人」になってもらいたいと思います。

次世代のリーダーとして活躍しよう(図書館報『若い樹』校長のことば)

 皆さんは、令和5年夏の甲子園の優勝校を覚えているだろうか。

 神奈川県代表の慶應高校である。

 スタンドを揺らす応援が話題となった。付属校である幼稚舎の児童も応援に駆けつけ、テレビでは「最も若い塾生」と紹介されていた。

 児童、生徒、学生を「塾生」と呼ぶのであれば、「塾長」もいる。

 令和5年1月、日本経済新聞の「リーダーの本棚」欄に、慶應義塾長である伊藤公平氏の愛読書が紹介されていた。タイトルは「職分全うする覚悟を」。全部で8冊紹介されている中で、「戦争はどうやって起こるのか、心の中でずっと気になってきた」というキャプションで取り上げられていたのが『失敗の本質』(野中郁次郎ほか著、中公文庫)。興味が湧き、手にとってみた。

 ところで伊藤塾長は1965年生まれ。私より一つ年下だが同世代である。

 私は昭和39年に生まれている。所謂大東亜戦争が終わったのは昭和20年。戦争が終わって19年後に生まれていることになる。ちなみに昭和39年は、最初の東京オリンピックが開催された年でもある。

 19年。ついこの間である。卒業する65期生の多くは今年19歳になる。2024年から19年前。2005年、平成17年である。

 私の子どものころは「戦争を知らない子どもたち」等の歌がヒットしていて、まさに自分もその一人。もちろん戦争なんて知らないしわからない。そう思ってきた。

 しかし一昨年母校に赴任し、後輩である皆さんの顔を見ているうちに、自分が何か伝えなくてはならないのではないか、そんな風に考えるようになったこともあり、この本を手に取った。

 本書のカバーには「大東亜戦争における諸作戦の失敗を、組織としての日本軍の失敗ととらえ直し、これを現代の組織一般にとっての教訓あるいは反面教師として活用することをねらいとした」と書かれてある。当時の陸軍、海軍ともに「組織」であるから、本文中には「作戦部長」や「作戦課長」などの職名が出てくる。国をはじめ、都道府県や市町村などの自治体、また、民間企業もその多くが、はじめはこうした「組織」の形を参考にして成り立っている。敗戦という日本軍の失敗を「組織」の失敗と捉え、どのようなことに気を付けていけば、同じような失敗を避けることができるのか、共通項を抽出して教訓を得るということが、本書の試みとなっている。

 私は一読して「優秀なリーダーが必要である」ということを感じた。

 本書に出てくる登場人物たちも、はじめから「部長」や「課長」であったわけではない。はじめは誰でも新入社員。一人の担当として社会人生活をスタートさせているはずである。経験を積む中で昇進し、徐々に責任あるポストを任されるようになる。

 私はもちろん教員として社会人生活をスタートさせているが、異動の中で、教育委員会事務局などの自治体職員を経験させてもらったことがある。県や市町村で働かせてもらったが、最初はお互い一担当として一緒に働いた仲間が、時間が経つと課長や部長に昇進している。逆に言うと、「部長」や「課長」も、みんなはじめは隣で一緒に働いていた仲間である。

 こんなことを考えながら本書を読むと、想像がひろがる。「作戦部長」も「作戦課長」も、恐らくその時々で、最善を尽くして情報を集めて案を練り、上席に説明して、直しの指示があれば徹夜で直し、仕事をしてきたはずである。それなのに、である。

 本書の示唆のとおり、日本軍という組織と、現代の日本の様々な組織に、今なお共通する課題があるとすれば、少なくとも意識的でありたいと思う。この本を薦めてくれた伊藤塾長も同世代。思うところがあったのではないかと拝察する。今回は「愛読書」ということであるので、塾生に薦めるというよりは、塾長に就任し、塾長としての職分を全うしたいという思いを込めて紹介されているのだと思う。

 65期生は、これからさらに進学して、ゆくゆくはさまざまな「組織」に所属し、その将来を担っていくことになると思う。本校は「目指す学校像」で「グローバルな視野を持ち次世代のリーダーとして活躍できる人を育てる」ことを謳っている。

 改めて、これからの日本には、優秀なリーダーが必要なのである。ぜひこの本を手に取って、よりよい社会を築いていただきたいと思う。昨年夏の時点で本校の図書館にはなかったのでリクエストしておいた。難解な本ではあるが、興味を持った66期・67期生も、機会があれば手に取ってもらいたい。

 最後に、伊藤塾長は本書の紹介で「できれば戦争に向かうことを止めたい、日本を外交で守りたいですね」と述べている。外国語科を設置している本校は、普通科の生徒も含め、英語が得意である。グローバルな場面におけるタフなネゴシエーションを可能にする英語4技能の習熟は、日本の、世界の平和につながっている。グローバルな社会で蕨高生が活躍する未来は、すぐそこまで来ているのである。

第4回学校説明会 校長あいさつ

 皆さんこんにちは。校長の山本でございます。明後日から県内私学の入試が始まると伺っておりますが、本日はご来校くださいましてありがとうございます。

 さて、本校は、創立68年目を迎える男女共学の進学校でございます。普通科と外国語科を設置しております。蕨市の北端にあり、さいたま市や川口市と市境を接するところに立地しております。蕨、南浦和、北戸田の各駅からそれぞれ徒歩20分程度となっており、県内の幅広い地域から通学可能となっております。

 進路の状況でございますが、昨年春の実績では、国公立大学の現役合格件数は105件となっております。私は本校24期の卒業生ですが、私の同期は24件でした。その後も30件前後が続いてきましたが、創立50周年のあたりから40件を超え始め、創立60周年を経て80件を超え、令和に入って100件を超えるようになりました。

 2学期制のもと土曜授業を導入し、昨年度から65分授業を50分授業に改めるなど、授業時数の確保に努めております。また、これからの、自ら考えて課題を設定し、他者と協働して課題の解決に取り組むことが求められる時代にあっては、文系であっても理系の知識が、理系にあっても文系の知識が必要となることから、本校の教育課程は2年生まで共通のカリキュラムとなっております。

 本校の校風を表すことばとしては、「文武両道」「Wの挑戦」「グローバルな視点を持った次世代のリーダーの育成」などが挙げられます。昨年春の105名の国公立大学現役合格者のうち、約8割の84名が引退まで部活動を続けています。中高一貫校では6年かけて準備する大学進学を3年間で行っていくため、本校では「文武両道」に取り組むことで、セルフマネジメントの力を高めています。「Wの挑戦」は「行ける大学」ではなく「行きたい大学」を志願する校風を育んでいます。そして「グローバルな視点」です。外国語科の生徒が当たり前のように英語を話すことから、普通科の生徒も大いに刺激を受け、英語科の教員の指導も相まって、英語に対する学びのモチベーションが高くなっています。留学生の受け入れも積極的に行っており、昨年度はオーストリア、タイ、フランスから受け入れました。いずれも母国語のほかに英語が堪能で、生徒は大いに影響を受けています。ALTは2名常駐し、出身国はフィリピンとアフリカのジンバブエです。そのほか、チュニジア大使による授業やオンラインを通した中国やインドネシアとの交流など、日常的にグローバルな視点が身に付く環境が整っております。

 ところで、年末の日本経済新聞に、自動車メーカーであるホンダの三部敏宏社長のインタビューが掲載されていました。ライバルである中国に触れ、「中国は世界のそうそうたる大学を出た優秀な人たちがものすごい勢いで働き、どんどん進化していく」と話していました。日本も負けてはいられません。本日ここにお集まりの皆さんも、将来は「そうそうたる大学」を出て、「優秀な人」になる必要がある人ばかりなのではないかと思います。本校の「目指す学校像」は、「生徒の進路希望を実現する文武両道の進学校」です。ぜひ、大きな夢を抱えて、本校の門を叩いてください。一緒に頑張りましょう。

 それではこの後、本校の概要や進路指導、外国語科や入試の説明が続きます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。 

12月全校集会 校長講話

 皆さんこんにちは。12月の全校集会を迎えました。後期はまだ折り返しですが、修学旅行や強歩大会、3年生の球技大会や外国語科の英語劇発表大会、また各部活動の新人大会など、大変充実した3か月だったのではないかと思います。そして、3年生はいよいよ受験本番を迎えます。現役生はここから、1月、2月、そして3月と、成績が急激に伸びてきます。これまで蕨高校で学んできたことを信じて、健康に留意して、さらに頑張っていただきたいと思います。

 さて、今日は、これから冬休みを迎える皆さんへの激励の気持ちを込めて、10月28日に1年生対象に行われた社会人講演会の中で、皆さんに伝えたいと思った内容を3点に絞ってお話します。講師は、本校32期の卒業生である高山範理さんです。高山さんは東京大学大学院を経て、現在は国立の研究機関である森林総合研究所で研究職を務めています。「森林浴」研究の第一人者としてご活躍ですが、当日は「学び続ける楽しさ:知識の探求と社会貢献」と題してご講演いただきました。1年生は思い返していただきたいと思います。

 1点目は、「目標を持つと人生が変わる」ということです。

 蕨高校ではなかなか勉強に身が入らなかったと謙遜していらっしゃいましたが、高校3年の10月に、よく遊びに行っていた台東区根岸の祖母の家のそばにあった東京大学に出掛け、大学の講義を聞いて衝撃を受けたそうです。「東京大学に行きたい」という思いが募って勉強を始め、浪人や他の国立大学を経て東京大学の大学院に進学され、博士号を取得し、現在の職を得るに至ります。高山さんは後輩である蕨高生に対して、「目標を持つと人生が変わる。目標を持て」ということを強調されていました。

 2点目は、「海外に出て、日本との違いに気付くことが重要」ということです。

 高山さんは大学入学後、一年間イギリスに留学します。そこで、日本では何かを勝ち取る、例えばよい大学に行くために競争して頑張っているが、イギリスでは自分がハッピーになるために勉強する。大学の合格は手段でしかない、ということに気付きます。また、自然環境への考え方の違いに触れることで、現在の「森林浴」研究につながるモチーフを得ることになります。高山さんは、とにかく英語は便利。情報の入り方が変わる。蕨高生にはとにかく英語を勉強することをお勧めするとおっしゃっています。

 3点目は、『ドラゴン桜』の「本質を見抜き、自分なりの答えを出す力をつけろ」は本当だ、ということです。

 高山さんは『ドラゴン桜』の桜木先生のセリフの中で、「勉強はこの国で許された唯一の平等」を取り上げ、これは「手段」とし、その後「本質を見抜き、自分なりの答えを出す力をつけろ」が「目的」だと指摘しています。そして、「答えを出す力」は「知識」と「考える力」の掛け算であるが、「考える力」は奥が深い。さらに、「考える」だけでなく、ちゃんと行動することが重要、と指摘しています。

 以上、高山さんの講演の中で、私が皆さんに伝えたいと感じた3点をお話ししました。いよいよ冬休みです。高山さんの指摘にもありましたが、冬休みは物事を深く考える、また、考えるだけでなく行動に移す絶好の機会でもあります。くれぐれも健康に気を付けて、充実した冬休みを過ごしてください。年明けの最初は土曜授業。1月6日です。お互いに元気な顔で再会しましょう。以上で校長講話を終わります。