校長室より
図書館へ行こう(図書館報『若い樹』校長のことば)
図書館には特別な思い入れがある。
大きな赤い鳥居の脇に白い建物の市立図書館があった。大学受験の勉強をするため、この図書館の閲覧席に足繁く通った。当時は朝、図書館の外に並んでいると順番に数字が書かれてあるカードが配られ、開館時間前に任意の数字が発表されて、その数字から順に入館が許された。早く並んで若い番号をもらってもいいことはなく、いわゆる抽選だった。
浪人中は都内の予備校に通った。予備校が終わると都立図書館に行った。勉強に飽きると様々な書籍に手を伸ばした。何しろ図書館である。本は無数にある。自分の学生時代はいわゆる「角川ブーム」のころで、横溝正史の『犬神家の一族』や森村誠一の『人間の証明』、高木彬光の『白昼の死角』など、小説と映画がコラボする「メディアミックス」が巷を席巻していた。その影響もあって、映画化やドラマ化された作品は手に取りやすかった。松本清張などの社会派推理小説、清水一行などの経済小説もよく読んだ。大河ドラマでは「徳川家康」をやっていたので、山岡荘八の原作全26巻を浪人中に読破した。合格した学部の入試の日本史で織豊政権が取り上げられ、スムーズに解答できたのはラッキーだった。
大学の学科は国語国文学科。どう考えても本がなければつとまらない学科であったが、何しろお金がなかった。この大学の入学式の総長のことばは今でも覚えていて、「この大学には教授や図書館の文献など、皆さんの研究に必要となるすべてが揃っているが、皆さんが自ら手を伸ばさない限り、何も得ることはできない」という趣旨であった。お金がなかったので、4年間専門書は買うまいと心に決めて臨んだが、この大学の図書館は総長の言うとおり、自分程度の学生の卒業論文にはおつりがくるくらい、ありとあらゆる文献を備えていた。先行文献にあたるため『國文學』などの雑誌に掲載されている論文も読んだが、バックナンバーまでほぼ完備されていた。そのおかげで本当に専門書を買わないで卒論を書き、大学を卒業した。このように図書館の恩恵を十二分に受けていたため、将来は図書館のそばに住みたいとさえ考えていた。
さて、本冊子は図書委員会発行の図書館報『若い樹』である。
私は本校の卒業生であるが、大学は自転車通学、就職してからは自動車通勤が多かったため、ひょっとすると蕨高校に通っていた3年間が人生で最も本を読んでいた時期かもしれない。京浜東北線の乗車時間は片道15分。高校3年間、欠かさず読書をしていた記憶がある。
最近の高校生は本を読まないと言われて久しいが、いまや電車やバスに乗っても、本を読んでいる人よりスマートフォンを見ている人のほうが圧倒的に多い。かくいう自分も、新聞は購読をやめて電子版に切り替えたし、欲しい本があるとECサイトやフリマアプリのお世話になることが多くなっている。以前は本を探して書店をはしごすることも多かったが、そうした機会はめっきり減ってしまった。
しかし、である。
この原稿を書くために、夏季休業中の本校の図書館を訪れた。図書館は開館しており、図書・視聴覚部の先生方のお話を聞くことができた。
図書館に入ってすぐのところに新着本のコーナーがある。とても魅力的でキラキラと輝いて見えた。当然のことであるが、世の中では毎日のように新刊本が発行されている。本校の図書館のスペースには限りがあるため、すべての本を購入することはできない。新着本のコーナーに並んでいるこの本たちは、あまたある新刊本の中から本校の生徒のために選ばれた「選抜選手」なのである。新着本のコーナーがキラキラ輝いて見えたのは、窓から差し込む残暑厳しき初秋の日差しがまぶしかっただけではない。これらの新着本を手にするであろう蕨高生のことを真剣に考えている先生方や図書委員会の生徒たちがいて、これらの本を選んだ思いが伝わってきたからではないかと感じた。
本とは出会いである。新聞や雑誌の書評や動画による要約、有名人のインタビューなどで紹介されているものなど、メディアを通して読みたいと思い、入手することが多い。いまさら「オンラインより対面」などと二元論を振りかざす気は毛頭ないが、図書館はやはり「リアル」である。本に何げなく手を伸ばし、そのまま没入して、借りて持って帰って読破する。そんな出会いがあるのは図書館である。
変化の激しい現代だからこそ、蕨高生にはこんな本を手に取ってもらいたい。図書館にはすでに多くの生徒が訪れていると聞くが、このような思いのこもったラインナップで皆さんをお迎えする本校の図書館を、もっともっと訪れてもらいたいと思う。
第2回学校評価懇話会 校長あいさつ
皆さんこんにちは。校長の山本でございます。本日はお忙しい中、本校の第2回学校評価懇話会にご出席くださいましてありがとうございます。
先ほどは、学校評議員会ということで、委員の皆様には大変お世話になりありがとうございました。ここからは、学校評価懇話会ということで、主に本校の学校自己評価についてお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、生徒の皆さんも出席いただいておりますが、本日のメインである、お手元の学校自己評価システムシートについて、簡単におさらいしたいと思います。
本校の学校運営では、「目指す学校像」を掲げ、その実現に向け、3つの重点目標を定めています。3つの重点目標の番号は、その下の表の3つの領域に対応しています。それぞれの目標の実現に向け、どのような方策で臨むかについては、「具体的方策」のところにお示ししてございます。本日は1年間、この方策で取り組んだその達成状況を中心に説明させていただきます。
生徒の皆さんはまさに当事者ですから、説明を聞いて感じたこと、特に、この私たちの母校、蕨高校は、今後どのように取り組んでいくとさらによくなると思うか、皆さんが感じた建設的なアドバイスをいただきたいと思います。
本日の学校評価懇話会で、委員の皆様からいただいたご意見をもとに、本校をさらによい学校にしてまいりたいと考えております。どうぞ、忌憚のないご意見を賜りますようよろしくお願いいたします。
第2回学校評議員会 校長あいさつ
皆さんこんにちは。本日はお忙しい中、本校の第2回学校評議員会にご出席くださいましてありがとうございます。
コロナ禍でございますが、報道によりますと、ようやく第5類への移行が見えてきたところかと存じますが、肌感覚で申しますと、生徒の感染も続いており、まだまだ油断できないというのが本当のところでございます。
ウイズコロナに翻弄された今年度でございますが、そうした中にあっても、運動会や強歩大会などの体育的行事をはじめ、林間学校や修学旅行などの泊を伴う行事、そして蕨高祭など、一定の制約はありつつも、様々な学校行事を実施してまいりました。2年間中止を余儀なくされた臨海学校も、趣旨を受け継ぐ形で林間学校として実施しました。学年の教員からは、学校行事による生徒の成長ぶりが実感できるなどの声を聞いております。
また、外国語科を設置する本校の大きな特色として国際交流事業の充実がございますが、今年度も残念ながら渡航による交流こそ叶いませんでしたが、オーストリア、タイ、フランスからと、3名の留学生を迎えることができました。母国語の他に、当たり前のように英語を話す留学生が身近にいるということで、大きな影響を受けた生徒も多かったようです。その一方、ハイチの大使館員によるフランス語の授業や、中国やインドネシアとのオンラインによる交流など、様々な形で国際交流を深めることができました。
さらに今年度は、高等学校の新学習指導要領本格実施の初年度でございました。私も本校のすべての教員の授業を見ましたが、プロジェクターなどのICT機器を活用し、生徒同士の話し合い活動を重視するなど、よりよい授業を目指して日々工夫を重ねている様子が見られました。
それではこの後教頭より、お手元の学校自己評価システムシートを基に、1年間の本校の学校運営の概要について説明させていただきます。是非とも、忌憚のないご意見、ご助言を賜りますようお願い申し上げます。
第4回学校説明会 校長あいさつ
皆さんこんにちは。校長の山本でございます。本日はお忙しい中、本校の第4回学校説明会にお集まりいただきありがとうございます。
恐れ入りますが、お手元の『令和5年度 学校案内』の3ページをご覧いただきたいと存じます。私からは、本校の「理念」について説明させていただきます。
蕨高校の目指す学校像は「生徒の進路希望を実現する文武両道の進学校~グローバルな視点を持ち次世代のリーダーとして活躍できる人を育てる」でございます。
次の「蕨高ビジョン」は、この「目指す学校像」をどのように実現していくか、そのプロセスを、各学年の目標に落とし込んだものでございます。
「Wの挑戦」という合言葉が出てまいりますが、「W」に込めた思いは二つございます。一つは、夢の実現に向けて挑む蕨高生、「Warabi」の頭文字をとって「W」です。もう一つは、蕨高生は「二つのこと」に挑むという意味での「ダブル」です。「二つのこと」とは、「困難に負けない強い精神力を身につける」ということと、「困難を切り抜ける柔軟な発想や思考力を身につける」ということを意味しています。本校を目指す皆さんには、このような本校の理念についてご理解いただくとともに、ぜひとも、学習、学校行事、部活動に全力で取り組む「文武両道」の気持ちを持っていただきたいと思います。
さて、現代は予測困難な時代と言われています。次々と降りかかってくる新たな課題の解決に、正解があるわけではありません。これからの時代に必要となってくるのは、自らが得た知識や情報を組み合わせて、他者と協働しながら、まだ誰も見たことがないような解決策を自ら生み出していく力であると考えます。
本校の教育課程は、2年生まで共通のカリキュラムとなっています。文系の科目も理系の科目もしっかり学び、自らの知識の引き出しを増やすとともに、大学で専攻する学問を見極める目を養っていただきます。また、将来、課題の解決に向けチームで協働する仲間は、様々な国にルーツを持つことが想定されます。本校は外国語科を設置していることもあり、このコロナ禍にあっても、今年度はオーストリア、タイ、フランスからと、3名の留学生を受け入れました。3名とも英語が堪能でした。彼らは母国語、英語に加え、日本語を学びたいという強い意欲を持っていました。どこの国の出身であっても、英語ができることで、国境を越えてコミュニケーションを深めることができます。世界の高校生は当たり前のように英語を話します。こんな一次体験を居ながらにしてできるのも本校の強みです。「グローバルな視点」を持つ次世代のリーダーを育てる環境を整えております。
さらに、解決策を自ら生み出していくためには、「自分で考えて行動する」姿勢が重要です。3年間という短い期間で進路実現の成果を挙げるためには、自らを律するマネジメント能力を高める必要があります。「文武両道」を掲げる本校では、部活動や学校行事に取り組む中で「自分で考えて行動する」姿勢が育まれています。また、令和5年度入学生の皆さんには、一人一台のタブレット端末として、Windows端末である「Surface Go 3」を購入していただきます。予めご了承くださいますようお願いします。
それではこの後、学校概要や進路指導、外国語科、選抜関係について説明させていただきます。是非とも本校を第一志望としてご検討くださいますようお願いいたします。
12月全校集会 校長講話
皆さんこんにちは。明日から冬季休業に入ります。休業が明けると、3年生は大学入学共通テストをはじめ、本格的な受験シーズンを迎えます。まずは3年生に向け、激励の気持ちを込めて3点お話をします。
1点目は「試験当日に受験できていることが重要」ということです。コロナとインフル。ダブルの流行が懸念されています。まずは健康管理です。最初の目標は、試験当日に、健康でしっかり出席できていることです。睡眠時間の確保は何より重要です。おすすめは朝型の生活です。7時間の睡眠時間を確保して午前5時に起床するためには、22時には就寝することが必要です。家族とは異なる生活スタイルになることも多いと思いますが、しっかりと睡眠時間を確保してください。そして、可能な限り、学校で勉強してください。学校には、志を同じくする仲間と、皆さんを応援している教職員がいます。『進路のしおり』の受験体験記では、難関大学に合格した卒業生の多くが、最後まで学校で勉強したと書いています。
2点目は併願校における「垂直」と「水平」についてです。これは、皆さんの先輩にあたる私の経験も踏まえ、お話しします。法学部への進学を目指し、難関校から安全校まで垂直に併願校を検討しました。しかし、ここからブレが始まり、早稲田大学や明治大学など、特定の大学の異なる学部を複数受験しました。結果として、教育学部に進学することになりました。こういうこともありますので、垂直・水平双方の目配りが大切なのではないかと思います。例えば、「心理学を勉強したい」という場合、早稲田大学であれば、文化構想学部、文学部、教育学部、人間科学部と、実に4つの学部が候補となります。情報をしっかり集めて検討をお願いします。
3点目は「現役生は最後まで伸びるは本当だ」ということです。これも皆さんの先輩として、経験を踏まえてお話しします。私の場合は浪人後のケースですが、情けないことに、11月の模試が終わっても、苦手の英語の偏差値が50を超えることがなく、志望校の変更も検討せざるを得ない状況でした。12月、1月は新しい内容に手を出すことを控え、専ら1年間に受けた模試の復習を行いました。一度やっているのでできて当たり前なのですが、4月5月にできなかった問題ができるようになっていることで、自分の成長を実感することができました。最も大きかったのは、一つの試験で合格圏の7割を取るという疑似体験ができたことでした。2月の本番でも解きながら、「おかしい。こんなはずはない。今年はとんでもなく問題が易しいに違いない」などと感じ、多くの学部に合格することができました。このように、12月から学力は飛躍的に伸びます。安易に目標を下げることなく、国公立大学の後期日程まで駆け抜けて欲しいと思います。
最後に1、2年生です。何といっても受験は英語です。そして英語には検定がありますから、1、2年生のうちから前倒しで実力を蓄えることができます。本校では、毎年4月にGTECを受験しています。セファールのB1は英検2級相当、B2は英検準1級相当です。1年生は入学当初に受けたGTECで、すでに11名がB1、英検2級相当の実力を持っています。この1年間の授業により、皆さんの英語力は飛躍的に高まっています。ぜひ、今からしっかり準備して、4月のGTECでは、多くの皆さんにセファールのB1、B2に到達していただきたいと思います。
頑張りましょう。以上で校長講話を終わります。