校長室より

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今持っている「手持ちの手段」から未来を切り拓こう(進路のしおり 巻頭言)

 2月に早稲田大学リサーチイノベーションセンターで行われたイベント「高校生・大学生とエフェクチュエーション」に参加した。

 「エフェクチュエーション」とは、インド人経営学者サラス・サラスバシー氏が提唱する理論で、優れた起業家に共通する意思決定プロセスや思考(考え方)を発見・体系化した市場創造の実行理論のことである。

 「起業家」と聞くと、アップル社を立ち上げた故スティーブ・ジョブズ氏や、ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏などを思い浮かべ、自分たちとは関係ない、一握りの天才たちの話、と思った皆さんも多いのではないかと思う。しかし、このエフェクチュエーションは、起業家の共通した思考プロセスを体系化し、誰もが後天的に学習可能なメソッドとして確立されたものである。

 これまでは、初めに目標を設定し、それを達成するために最適な手段を後から検討していく方法がとられることが多かったが、エフェクチュエーションでは、新しい方法ではなく、手持ちの手段から新しいゴールを発見していく手法がとられていることに特徴がある。

 ここで、本冊子『進路のしおり』との関連について触れておく。

 この冊子を手にしている皆さんは、自らの進路希望の実現に向け、決意を新たにしていることと思う。「大学進学の先を見据えて目標は高く!」を踏まえ、より高い目標を掲げ、綿密な計画づくりに着手している人も多いのではないだろうか。

 ここで紹介するエフェクチュエーションは、皆さんそれぞれの「進路希望の実現」という課題を解決するためのアプローチ、考え方の一つとして紹介するものである。エフェクチュエーションには「5つの原則」と呼ばれる共通項があるが、その第一は「手中の鳥の原則」、すなわち、新しい方法ではなく、手持ちの手段を用いて新しい何かを生み出すというものである。

 「自分は何ができるか」という観点から考え、皆さんが持っている特質・能力、知識・経験、そして人脈(家族や友人等)などの「資源」を洗い出すことで、すでに持っている手段を見出していくのがエフェクチュエーションの考え方である。

 現段階で、すでに皆さんが持っている特質・能力、知識・経験、そして人脈は、皆さんの「強み」である。続けていて楽しいこと、好きなことがあるのも「強み」である。その「強み」を改めて確認し、そこから皆さんの進路について考えてみてはどうだろうか。

 また、得意な科目が1科目でもあれば、その得意科目を「生かす」ことを考えよう。得意科目が1科目で合格できる大学は少ないが、その得意科目を無駄にしない観点から、あと2科目揃えば難関私大に、あと7科目揃えば難関国公立大学への合格が見えてくる。「手中の鳥」としての得意科目。まずは1科目、得意科目を持つことから始めよう。